クロモリトグラフへの復帰 ― 東京クロモの可能性
クロモリトグラフ(Chromo-lithograph)とは、19世紀に盛んに使われた多色石版印刷技法です。CMYKによる近代的なプロセスカラー印刷が登場する以前、印刷工たちは色ごとに石版を分け、10版以上の特色版で構成される美しいポスターやラベルを制作していました。
やがてこの技法は印刷の工業化とともに姿を消し、「クロモリトグラフ」という言葉自体が歴史の片隅に追いやられていきました。
そして今、東京で“クロモる”
乱数沼工房では、この古風な技術に現代のテクノロジーを組み合わせて再構築する試みを行っています。
- Photoshopでの色域選択や特色分解による版下作成
- レーザープリンターによるトナー転写をアルミホイルに応用
- 印刷費や資材費を抑えながらも、独自インクで刷り上げる鮮やかな色面
この工程は、単なる復古趣味ではありません。プロセスカラーに代わる“特色の組み合わせ”によって、人の目と手でしか作れない魅惑の印刷表現を可能にします。正確性より、記憶に残る色彩。
クロモリトグラフの未来は“趣味と表現”の中に
工房では、「東京クロモ」と呼びたいこの試みを通じて、アナログとデジタルの融合を図っています。たとえば:
- 自作の写真やイラストをPhotoshopで特色分解し
- それぞれの版をアルミホイルで制作、
- あえてズレやムラを活かした版画表現に昇華する
このような工程は、印刷というよりも、色の演奏に近い感覚です。
「クロモる」という行為に、ただの印刷以上の手応えを感じられる人々が、ここ東京の片隅から新たな文化を作っていく。そんな未来に期待しています。
※本記事は乱数沼工房による試験的研究・実験の一環として執筆されました。