2025年5月7日水曜日

クロモリトグラフへの復帰 ― 東京クロモの可能性

クロモリトグラフへの復帰 ― 東京クロモの可能性


クロモリトグラフ(Chromo-lithograph)とは、19世紀に盛んに使われた多色石版印刷技法です。CMYKによる近代的なプロセスカラー印刷が登場する以前、印刷工たちは色ごとに石版を分け、10版以上の特色版で構成される美しいポスターやラベルを制作していました。

やがてこの技法は印刷の工業化とともに姿を消し、「クロモリトグラフ」という言葉自体が歴史の片隅に追いやられていきました。

そして今、東京で“クロモる”

乱数沼工房では、この古風な技術に現代のテクノロジーを組み合わせて再構築する試みを行っています。

  • Photoshopでの色域選択や特色分解による版下作成
  • レーザープリンターによるトナー転写をアルミホイルに応用
  • 印刷費や資材費を抑えながらも、独自インクで刷り上げる鮮やかな色面

この工程は、単なる復古趣味ではありません。プロセスカラーに代わる“特色の組み合わせ”によって、人の目と手でしか作れない魅惑の印刷表現を可能にします。正確性より、記憶に残る色彩。

クロモリトグラフの未来は“趣味と表現”の中に

工房では、「東京クロモ」と呼びたいこの試みを通じて、アナログとデジタルの融合を図っています。たとえば:

  • 自作の写真やイラストをPhotoshopで特色分解し
  • それぞれの版をアルミホイルで制作、
  • あえてズレやムラを活かした版画表現に昇華する

このような工程は、印刷というよりも、色の演奏に近い感覚です。

「クロモる」という行為に、ただの印刷以上の手応えを感じられる人々が、ここ東京の片隅から新たな文化を作っていく。そんな未来に期待しています。

※本記事は乱数沼工房による試験的研究・実験の一環として執筆されました。

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