工房について

 工房について

乱数沼は、東京都江東区・森下にある、小さなリトグラフ版画工房です。

町の片隅にある、少し変わった「大衆版画工房」のような場所を目指しています。

工房主・濱中は、二十年ほど前にリトグラフという表現に魅せられ、草深い福岡の田舎から上京しました。絵を描くことも好きですが、それ以上に、新しい技法や制作方法を考え、試し、失敗し、また試すことに心躍る五十路の男です。


乱数沼という名前

当工房では、アルミホイルを版材として用いる独自のリトグラフ技法を中心に研究・制作を続けています。

「乱数沼」という名前は、制作中に現れる偶然のノイズや予測できない変化を、単なる失敗ではなく表現の一部として受け入れるという考えから名付けました。

私たちは、作品だけではなく、版そのものも実験の対象だと考えています。版は完成品ではなく、何度も描き替えられ、壊され、修復され、変質し、その痕跡ごと作品へと取り込まれていきます。

再現よりも発見。制御よりも対話。

そんな制作姿勢を大切にしています。


デジタルとアナログ、そして「アナログバック」

デジタル画像の加工や版下制作も積極的に取り入れながら、アナログ技法との柔軟な接続を探求しています。

特に興味を持っているのは、デジタルデータが刷りの工程で物理現象へと委ねられ、人間には完全には制御できない揺らぎやズレを獲得する瞬間です。

私たちは、この考え方を「アナログバック」と呼んでいます。

完全に管理された情報が、紙と版、インク、圧力、湿度、そして人の手を通して、再び生命を持ち始める。

それは、化石となった生物が、もう一度ゆっくりと生命活動を始めるような、不思議な創造の逆流です。

高精度や効率だけでは辿り着けない表現は、きっとこの揺らぎの中にあると考えています。


ご利用をご検討の方へ

乱数沼は、一般的な版画工房や印刷工房とは少し考え方が異なります。

高い再現性や、伝統的なリトグラフ技法による制作をご希望の方には、都内の歴史ある版画工房をご利用いただくほうが、ご満足いただけるかもしれません。

この工房は、効率より発見を、完成より試行錯誤を大切にする場所です。

思いどおりにならないことを面白がれる人。
版の変化を作品の一部として受け入れられる人。
新しい版画表現を一緒に探してみたい人。

そんな方と出会えたら、とても嬉しく思います。


AI時代の工房 ――「乱数沼」が目指す場所 朝の清掃の仕事も、もう二十年近い。 来るべきロボットとの清掃スキル戦争に備え、日々技を磨いてきた。七十歳くらいまでは現役でマンション清掃を続け、場の不浄を祓い、悪きを退け、人々が心地よく暮らせる一助となれたなら、それで十分だと思...