2025年5月7日水曜日

色域選択クロモリトグラフの制作工程

色域選択クロモリトグラフの制作工程

デジタル画像を活用した色域選択クロモリトグラフの制作工程

リトグラフの表現力と、デジタルの柔軟さを融合させた「色域選択クロモリトグラフ」。ここでは、PhotoshopやGIMPなどを使った画像処理から、実際の印刷までの流れをご紹介します。

1. 画像の準備と色域の抽出

まず、JPGやPNG形式の画像を用意します。PhotoshopまたはGIMPを使って、色域選択ツールで刷りたい色を抽出しましょう。選択範囲はパラメーターで細かく調整し、狙った色面のみを切り出します。

抽出した色域は、彩度や明度を調整してモノクロ画像(版下用)に変換。必要に応じてコントラストも調整し、PNGやJPGとして保存します。

※アルミホイルに転写する際、トナーが白抜けすることがあります。最初にCMYの3色で下地を刷り、ファンデーションを作っておくと発色が安定するようです(実験中)。

2. 版下データの構築(Illustrator / Affinity Designer)

IllustratorやAffinity Designerで版下データを作成します。先ほどの画像を配置し、それをベースにレイヤーを複製して、各色ごとの版下を順に作っていきます。

見当線(トンボ)を必ず作成しておきましょう。これは印刷時の紙の位置合わせに必須となるため、各画像のサイズと位置がズレないように保存して管理してください。

3. モノクロ印刷(レーザープリンター)

版下が完成したら、レーザープリンターでモノクロ印刷します。リトグラフの場合でも、画像の反転は不要です。版材と紙の関係上、通常通り印刷すればOKです。

4. アルミホイルへの転写

印刷した版下は、非水性の有機溶剤(ネイル用除光液など)で、トナーを溶かしてアルミホイルへ転写します。

溶剤が乾く前に作業するとトナーが滲んでしまいます。しっかりと乾かしてから作業を進めましょう。

5. インク作成と印刷準備

希望の色を練り板で調合し、ローラーで均等に伸ばします。インクは転写直後にすぐ乗せることで、発色とノリが良くなります。準備は手早く行うのがポイントです。

6. プレス印刷

光沢のない面を上にしたアルミホイル版を霧吹きで定盤に貼り付け、転写した版下を重ねます。

プレス機でゆっくり圧をかけながら定盤を移動させます。「蟻が進むほどの速さ」でというのが、うまく刷るコツです。

7. 製版処理と最終印刷

アルミホイル上にアラビアゴム液を塗布して製版を完了します。その後、ローラーでインクを乗せ、紙を置いてプレス機で圧刷すれば完成です!

この工程を繰り返すことで、特色による多色刷り「クロモリトグラフ」が仕上がります。デジタルの恩恵を受けつつ、アナログならではの手触りと発色を味わえる、新しい表現方法としておすすめです。

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