紙段漸圧とは|リトグラフプレス改造による新しい印圧調整法
紙段漸圧(しだんぜんあつ)とは、リトグラフやエッチングなどの手動プレス機で、紙厚を段階的に配置することで印圧を徐々に高める独自の技法です。これは従来の「トグルレバーによる瞬間的な圧力印加」に対して、より滑らかで制御しやすい圧力変化を実現します。
発想の背景
手動式プレス機では、印圧の立ち上がりが急であるため、版面へのダメージやムラが生じやすいという課題があります。
これを解決するために考案されたのが、「紙段漸圧」。
印刷ベッドの手前側(印画部の余白側)に、1mm〜1cm刻みで紙を階段状に10枚程度重ねることで、ベッドが進むにつれて徐々に印圧が高まる構造を作ります。
「最初は軽く、徐々に重く」──機械的には単純ですが、印刷結果には繊細な差が生まれます。
紙段漸圧の理論的説明
プレスベッドが進行する方向に沿って紙厚が増していくと、トグルレバーの角度変化と紙厚変化が加算的に働き、印圧が時間的にも空間的にも滑らかに上昇します。
これにより、以下のような効果が得られます。
- 印画部に入る前に「予備圧」がかかり、紙と版が自然に馴染む
- インク転写のムラが減少し、トーンが安定する
- トグル操作に必要な力が分散し、作業疲労が大幅に軽減される
- 機械への負担が減り、ギアや軸の寿命が延びる
通常法との違い
従来の方式では、トグルレバーを倒す瞬間に一気に圧力がかかるため、印画部の入りと抜けで圧ムラが発生しやすく、精密な印刷では難点となっていました。
紙段漸圧では、印圧の導入角が緩やかになるため、版面への衝撃がなく、柔らかい印象のプリントが得られます。
紙段漸圧の作り方(簡易版)
- ベッド上のチンパン(版の下敷き)より手前10cmほどに、A4上質紙を10枚用意。
- 1cmずつ奥にずらして重ね、階段状のスロープを作る。
- その上に版・紙をセットし、通常通りハンドルで圧を加える。
- トグルを倒してベッドを送ると、徐々に印圧が高まり、スムーズな圧が得られる。
環境的・構造的意義
この方法は、機械構造を変えることなく圧制御を改善できるサステナブル・ユーティリティ(持続的有用性)の好例です。
旧式のリトグラフプレスや手動プレス機が時代に埋もれず、新しい価値を持って再生する道を示しています。
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