乱数沼(らんすうぬま)について
乱数沼は、東京都江東区・森下にある小さなリトグラフ版画工房です。町の“ちょっと変わった大衆版画工房”といった雰囲気を持っています。
工房主の濱中は、15年以上前にリトグラフ表現に憧れ、草深い福岡の田舎から上京しました。絵を描くことも好きですが、それ以上に、新しい制作方法や技法の研究・開発に心躍る、五十路の男です。
乱数沼の特徴
当工房では、アルミホイルを版材として使う独自のリトグラフ技法を中心に制作を行っています。「乱数沼」という名前の通り、制作中に起こる偶然のノイズや“失敗”すらも表現の一部と捉え、それを再現・発展させることで、独自の作風を育てています。
このスタイルは、「版画=複製」の常識を裏切る、再現されない一回性の痕跡を重視する試みでもあります。
デジタルとアナログの融合、そして“アナログバック”
Photoshopなどによるデジタル画像の加工や版下制作も積極的に取り入れ、アナログ技法との柔軟な接続を探求しています。特に、デジタルデータが刷り工程でアナログの物理現象に“委ねられる”瞬間に生まれる乱数的なズレや不確実性に、美しさと可能性を見出しています。
これは私たちが「アナログバック」と呼ぶ試みに近いものです。完璧に制御された情報が、再び人間的な手触りや揺らぎを得て立ち上がる──つまり、ロボットがもう一度「人間になろうとする」ような、逆流の創造行為です。
未来の出力技術やアート表現は、この“揺らぎ”をどのように扱うかで、また大きく変わっていくことでしょう。
ご注意とご案内
通常のリトグラフ技法や、高精度な美術印刷をお求めの方には、都内の由緒ある版画工房のご利用をおすすめいたします。乱数沼は、「偶然と実験、そして楽しさ」を重視する、ちょっと風変わりで、どこか詩的な場です。
